2012年11月15日木曜日

西野解任 神戸はぶれているのか(後編)

西野解任の背景と僕の見解の後編です。(前編はこちら

選手起用の固定化の弊害

ガンバ大阪時代から西野監督の選手起用は特定の選手を重用する傾向があった。神戸においてもその傾向が見られ、特にセンターバックの序列は明白であった。

北本、伊野波が固定のスタメン、続く三番手は高木、四番手はイ・グァンソン、昨年のスタメンだった河本は怪我が癒えても五番手の評価で、結局出場機会を求めて大宮に移籍した。
センターバックについては高木はミスが多く、グァンソンはメンタル的な波が大きい。北本と伊野波が怪我がちな現状では河本の不在は非常に痛い。

岩波をカップ戦や天皇杯で使わず公式戦でスクランブルデビューさせたことも、結果的には成功だったが、リスク管理面からは疑問符がつく。

ボランチについては、田中英雄と橋本英郎の二人でほぼ固定されてきた。交代する場面があったとしても、ボランチ同士の交代はなく、控えの三原は長く実戦から遠ざかることになった。西野監督最後の試合となった横浜Fマリノス戦で三原を起用したものの、機能しなかったことはとても皮肉であった。

ペドロヴィッチ、クルピ、ネルシーニョといったJ2で力をつけ、J1上位へ導いた監督達は選手を固定化せずに、内部競争を活性化させてチーム力を向上させている。この辺りも西野監督でJ2を戦えないと判断した理由のひとつかもしれない。

ランニングコストの増加

西野監督にはJリーグで最も高いサラリーを支払い招聘したとサポミであった。
この他に、西野監督のチームにはランニングコストが増加する要素があった。西野監督の要求により契約したフィジコのブローロ、またホームゲームでも全員でホテルに前泊するということも西野監督の要求としてチーム運営に新たに取りれられた。
これらのランニングコストの増加も成績の上昇に直結していれば飲み込めた話だったのかもしれないが、成績不振やけが人の続出ではその必要性に疑問が残る。
ましてやJ2に降格してもこのコストをかけるのかというと説得力が乏しかったのだろう。
このランニングコストの増加も西野監督解任の一要素になったのかもしれない。

高橋GMによる西野監督の評価

これが今回のエントリーのコアの部分である。
そして、先日のサポーターミーティングでコアの部分でもある。
概要はツイッターや幾つかのブログで報じられているが、高橋GMの生の言葉にできるだけ近い形で起こしてみた。

攻撃面では100%の満足はない。
ひとつは外国人の補強について要求されたこと。自分としては持っていた戦力で建てなおして欲しいという気持ちがすごくあった。
もうひとつは、ポジション、選手のチョイスをふくめて練習に落としんで具体化して欲しかった。
守備面ではアプローチの甘さが目立った。
トレーニングの中で、西野サッカーの特徴である攻撃的なことを受け入れて全面的にサポートしたいという気持ちもあったが、神戸というクラブの最も大事にしないといけないところは全員が守備も攻撃もしっかりと切り替えをして、それを土台に攻撃力を乗せていくことだと考えていた。
しかし、守備的な戦術、守備のトレーニングがどうしても甘くなってきた。選手自身の一試合の走行距離も一人あたり1キロ近く落ちてきていた。そこにはすごく不満を持っていた。 
ガンバのように、失点は多いが攻撃力で勝って行くというサッカーを西野監督は目指していた。しかし、ガンバのように外国人を10億、20億かけ取ることはできない。今年の選手について自分の中ですごく信じており、彼らがこのチームのベースを作ってくれると考えている。
選手とも話をして、既存の選手が立ち返るところは昔やっていたサッカー、新しく来た選手はさらにもう一つ上に行きたいとか、新しいサッカーを作りたいという思いがある。
自分としては選手自身に微妙なズレがあるのを感じている。昔に戻ったとしても最高順位は9位だし、それより上に行くためには、上のレベルを目指さなければいけないと思っている。
その中で、試合に出ている選手、出ていない選手、キャプテンの吉田と話をして、ズレが出てきているのを感じている。
このズレを持ったまま残り3試合を戦っていくことは難しいと思います、ということをクラブのミーティングで伝えた。


高橋GMが指摘した課題点と下した判断

高橋GMが指摘した西野サッカーの課題点を整理すると以下のようになる。
 ・攻撃の形が練習で具体化されていない
 ・守備の戦術、トレーニングが甘い
 ・選手間の認識が統一できていない
(これはもう、監督の能力としてどうなの?と思う指摘ばかりですよね。当然、西野サイドにも言い分はあると思うので、どちらが正しいとか正しくないとかいうことをここで議論するつもりはありません。)

大事なのは、GMが監督について、上記のような、監督失格ともいえる評価をしたという事実である。上記のような評価をし、成績として勝点も稼げていないのであれば、GMとして監督解任の上申は已む無しという事になる。つまり、高橋GMのなかではぶれてはいなかったということになる。

結果として、高橋GMの上申を社長、会長が承認して、西野監督の解任が決定したということになる。つまり、組織はきちんと機能していたのだ。三木谷会長が招聘した西野監督を現場の責任者である高橋GMの判断で更迭したというのが実情のようである。

また、『神戸というクラブの最も大事にしないといけないところは全員が守備も攻撃もしっかりと切り替えをして、それを土台に攻撃力を乗せていくことだと考えていた。』についても多くの神戸サポーターと共有できていることなのではないだろうか。
このことが高橋GMから明言されたことはとても大事なことだったと思っている。

おわりに

冒頭にも述べたように、よそから見てヴィッセル神戸が迷走していると思われるのはしかたがないだろう。
けれども、順を追って整理していくと、実は高橋GMが現場判断として、残り3試合については西野監督よりも安達監督で戦うほうがよいと判断した結果だということがわかってきた。
今は、この判断を信じて、高橋GM、安達監督を支持し、応援するということ、それが我々にできる唯一のことだ。最後に安達監督就任時、初練習でサポーターにむけた挨拶の言葉で終わりたいと思う。

    安達監督就任 初練習時の挨拶の言葉
「残り3試合。最大の目標はこの3試合で勝点9を取ること。それが出来る状況が現実。ただ、残留争いをしていることも現実。試合が進むごとに、勝点の目標も変わってくると思うが、今、この時点で言えることは最大の目標勝点9を取って、勝点45にしてシーズンを終えるということ。

あとは精神的な部分。西野さんが監督として来てから、多かれ少なかれ、西野さん頼りになっていた。あれだけの監督が来たのだから、任せておけばチームを強くしてくれると思っていた部分があったのではないか。それはみんなが反省しなければいけない。クラブ力を上げようと思ったら、1人に任せるのではダメ。1人1人が力を出し切ること。試合に出られない選手、怪我をしている選手にもやることは必ずある。それをみんなでやっていこう。
サポーターの皆さんにも、お願いします。今もたくさんの声援をもらっているが、例えば、あと1人友達を連れてスタジアムに来て、さらに大きな声を出すとか、小さなことでもいいので、力を貸してほしい。クラブにかかわる人全員が人任せにならず、100パーセント力を出し切ってほしい」

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